フィリピンのコミック市場と「pinoy Komiks」の歴史
東南アジア各国では、日本の漫画やアニメなどのコンテンツ産業が非常に人気があります。最近では、2018年にマニラで最大級のポップカルチャーイベント「Asia POP Comicon Manila 2018」が開催され、大変な話題となりました。
現在のフィリピンでは、DCやマーベルのような欧米のコミック(アメコミ)や日本の漫画が若者に愛されており、コミック市場は今後の成長が期待されています。
このフィリピンのコミック市場拡大には大きな要因があります。
その要因とは、フィリピンの人々がアメコミや漫画が流通する以前から絵と物語を表現した創作物に親しみ、その土壌が現在の海外漫画の人気を支えていると考えられることです。
フィリピン発の漫画「pinoy komiks」(フィリピンの漫画はアメコミの影響が強く、「comics」ではなく「komiks」と表記されます)は、独立活動家であったホセ・リサールの作品に起源を持つとされています。
「pinoy komiks」は、「フィリピン・コミックスの父」とされるアントニオ・S・ベラスケズがアメコミの要素を取り入れ、人気を集めるようになり、1980年代には週刊コミックが47誌も発行される黄金期を迎えました。
しかし、1990年代以降、テレビの普及などにより、コミックの人気が急速に低下しました。
さらに、当時のコミック出版界を支配していたラモン・ローセスが亡くなり、彼の一族は出版事業から撤退。そのため、「pinoy komiks」の文化を継承する人々がいなくなりました。
フィリピンのクリエイターたちは現在、現地で開催されるコミックコンベンションや、日本のコミックマーケットに似たイベントに参加し、自費で本を販売したり、インターネット上に投稿したりしています。
これらのクリエイターの中には、日本の漫画の影響が強く反映された作品を制作しており、今後の文化的発展に期待が寄せられています。
参照:(ホセ・リサールによる民話『サルとカメの人生』)
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=43979479
読者層
フィリピンでの日本の漫画やアメコミの読者層は、主に中産階級や富裕層の子供や青年です。
現地で「オタク」と呼ばれる熱狂的な愛好家が多く、外国産の漫画を購入していきます。
一方で、比較的安価に手に入った「pinoy komiks」は現在流通が乏しく、若者たちはインターネットの動画配信やSNSなどの異なる娯楽に夢中になっており、「pinoy komiks」は現地でも限られたコミュニティ内でしか広まっていないようです。
フィリピンでは、日本のアニメや漫画などが非常に人気です。その象徴的な例が「ボルテスV事件」です。
日本のロボットアニメ『ボルテスV(ファイブ)』は1978年にフィリピンで放送され、最高視聴率は58%を記録したと言われています。
この作品は当時、多くの子供たちに人気がありましたが、大統領フェルディナンド・マルコスによって最終話の直前に放送が禁止されました。この出来事に対し、抗議活動も行われたと言われています。
同様に、フィリピンでテレビ放送された漫画作品も非常に人気があり、地元の若者にその話題を振ると必ず好意的な反応が返ってきます。
このことから、フィリピン人にとって、日本の漫画はアニメを通じて受け入れられ、アニメを視聴した若者が成長し、漫画という形で再び出会うという流れがあるようです。
フィリピンで人気の漫画
『ダーナ』
参照:https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=20270854
ダーナは、マーズ・ラベロとネスター・ドレンドによって描かれたフィリピンのコミックアーティストで、彼女は「キング・オブ・フィリピン・コミックス」と呼ばれています。
彼女はフィリピンで最も有名なスーパーヒーローの一人であり、「フィリピンのワンダーウーマン」とも呼ばれています。フィリピンでアニメや映画化され、広い世代から認知されています。
彼女の物語は、村の少女ナルダが宇宙から降ってきた隕石を飲んだことで宇宙の戦士ダーナに変身できるようになり、地球を邪悪な勢力から守るというものです。
興味深いことに、この設定は偶然にも日本の「魔法少女モノ」と似ており、しばしば比較されることがあります。
『トレセ』
参照:https://gamerant.com/trese-adaptation-comics-differences/
「トレセ」は刑事のアレクサンドラ・トレセが超自然的な犯罪に立ち向かうホラーサスペンス作品です。
この作品はブジェット・タンとカジョ・バルディッシモによって2005年にシリーズとして発表され、他の有名な「pinoy komiks」と比較して比較的新しい作品です。
2021年には、Netflixから「異界探偵トレセ」がアニメ化され、フィリピン初のアニメ作品として話題となりました。
また、この作品の人気は主人公であるアレクサンドラ・トレセのキャラクター性によるものと言われており、今後キャラクターコンテンツとしての人気拡大の可能性を秘めています。
『Mythspace』
「Mythspace」は、パオロ・チキアムコと有名なイラストレーターたちが共同制作したグラフィックノベルです。
この作品はフィリピンの古い伝説や神話を宇宙を舞台にしたSF作品に組み合わせたもので、2015年に刊行された比較的新しい「pinoy komiks」です。
この作品にはアメリカンコミックや日本の漫画の表現が強く反映されており、新しい試みとして称賛を受けています。
「Mythspace」はエンターテイメントとしてだけでなく、アートとしても高く評価されており、将来的には「pinoy komiks」の中でアニメ化される最有力候補として名前が挙がっています。
参照:https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=54971127
「Rusticman」は、「ダーナ」と同じマーズ・ラベロが手がけたスーパーヒーロー作品です。
「Rusticman」はDCコミックスの「プラスチックマン」とマーベルの「ファンタスティック・フォー」のキャラクターをベースにしたもので、特殊能力として「伸縮性」を持ち、自身の体を自在に曲げたり伸ばしたりすることができます。
主人公の「Rusticman」は宇宙人として描かれていますが、ゴムの木から特別な力を授かった人間としても描かれています。
日本の「ワンピース」と類似した設定ですが、「Rusticman」の方が先に登場しています。フィリピン人は「ワンピース」のアニメを見た際に、「Rusticman」を思い出すかもしれません。
『キャプテン・バーベル』
参照:https://en.wikipedia.org/wiki/Captain_Barbell
「Captain Barbell」は、アメリカンコミックの「Captain America」に触発された作品です。
この作品は同じくマーズ・ラベロによって創作され、彼もフィリピンを代表するスーパーヒーローの一人です。
元々はいじめられっ子だった少年が魔法のバーベルを手に入れることでスーパーヒーローに変身する、シンプルなストーリーです。
この作品は1963年に初めて発表され、現在までに5回の映画化がされています。
フィリピンで人気の日本漫画
「ドラゴンボール」
言わずと知れた伝説的な漫画です。鳥山明によって描かれたこの超人気作品は、フィリピンでも根強い人気を誇っています。
日本だけでなく、フィリピンでも男性から絶大な支持を受けています。1990年代にアニメが放送され、人気が爆発しました。作品は長く続いており、現在もコンテンツが展開されているため、フィリピンでの知名度は下がることはないでしょう。
フィリピンでは、ドラゴンボールのイラストが入ったTシャツなども販売され、日本の同人グッズとして人気を集めています。
「ワンピース」
これも日本を代表する人気作品です。主人公のゴムのように伸びる能力は「ミスティックマン」と類似しているように思えますが、フィリピンの人々はどのように感じているでしょうか。
特に人気のキャラクターはチョッパーで、男性だけでなく女性からも支持を受けています。
日本でもチョッパーのストラップが人気ですが、フィリピンでも同様の人気があります。
また、ワンピースはフィリピンのファッションブランド「OXYGEN」とのコラボレーションも行い、期間限定でコラボグッズが販売されたこともありました。
現地の企業との連携が進んでいることから、フィリピンでのワンピースの人気は不動のものと言えるでしょう。
『ナルト』
ナルトは東南アジア全体で非常に人気のある作品とされていますが、フィリピンでもその人気は衰えることはありません。
アニメが放送されたことから特に人気が高まり、日本独自の文化である「忍者」というテーマにより、特に男性の支持が高いです。
こちらの作品でも、「OXYGEN」とのコラボレーションが行われ、期間限定でグッズが販売されたそうです。
『スラムダンク』
フィリピンで特に人気を誇る作品は「スラムダンク」です。
その理由は、この作品がバスケットボールをテーマにしているからです。
フィリピンではバスケットボールが最も人気のあるスポーツとされています。その影響もあり、「スラムダンク」は男性だけでなく、女性からも多くの支持を受けています。
アニメもタガログ語に翻訳されて放送されたことがあり、幅広い層に人気を博しています。
『幽遊白書』
フィリピンでは1990年代に放送されたアニメが特に人気を集め、現在まで愛され続けているのが「幽遊白書」です。
フィリピンでは「Ghost Fighter(ゴースト ファイター)」というタイトルで放送されており、キャラクターやストーリーに対する支持が非常に高いです。
日本では既に古くなった作品ですが、フィリピンでは今でも人気作品として親しまれています
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